京論壇2018公式ブログ

京論壇2018の公式ブログです。活動報告やイベントのお知らせを行います。

【コラム】モラトリアムの終わり

どうもこんにちは。今から中国でのご飯が楽しみで仕方がない東京大学文化一類二年笠川裕貴です。


流石は国土が東西南北に広がる中国。各地に特色ある料理があって、ガイドブックを通じて深夜の僕の空きっ腹を痛めつけてきます。
(釈明しておくと、北京での議論をサボってご飯を食べようとかではなく、その後別途個人で行く中国旅行のことを指しています。サボらずちゃんと全力で議論します。)

...そろそろ本文に入りましょう。

 

「どうして京論壇に入ろうと思ったのか?」


知人に聞かれて、面接での答えを口に出す。「かつて京論壇に参加した先輩から話を聞いて面白そうだと思ったからだ」と。
雑談の話題は移ろう。次へ。またその次へ。
話題に触れるだけで、掘り下げることは雑談の仕事ではない。


しかし、ここで一歩止まってちょっと注意すると、僕の答えが必ずしも答えになっていないことに気付ける。
「面白そうだ」というだけで、はるばる北京へ行き、英語での議論に挑む気になるのか、と。


勿論、それだけで飛び込んでいけるフットワークの軽い人もいる。
しかし、僕はそうじゃない。怠惰に沈んだ大学生にとっては、北京も英語での議論も遠い。

 

では何故だ、と。そう聞かれたならば。
これまで、他人との対話を避けてきた。苦手だった。
苦手意識が先か、逃避が先か。どちらか分からないが、なんにせよ、中学、高校、大学と同質性の高い共同体にいて、その上、慣れ親しんだ友人らの輪から一歩を踏み出すことをしなかった。


冬の朝に布団から出られないのと同じかもしれない。
でも、それでも許される猶予期間はそろそろ終わる。
社会に出て、生計を立てなければならない。他者の意見に耳を傾け、他者の立場を慮り、必要があれば意見の摺り合わせや説得を行う必要があるだろうと考えた。
大学入学後一年経った当時の問題意識が、僕の背中を押した。

 

申し込んでも、選考で落ちるかもしれない。
でも、自分の薄弱な意志のみを頼みとして新たなことに挑戦し、継続するのは難しい。
中学高校での経験で、自分の決心が泥船であることも分かっていた。
僕には、冬の朝でも布団から這い出る理由をくれる始業時刻とアラームとが必要だった。
受験予備校が栄えた理由の一つは、受験生がこういった行動する短期的な理由とペースメーカーを与えるからではないかとも思う。

 

京論壇の選考の通過と無事第一志望の「サイバー空間の統制」分科会に入れていただける旨、メールで連絡いただいた時、どんなことを考えていたかはもう覚えていないが、当時のメモ帳にはテーマについての調べ事の記録が残っていたから、少なくともただ京論壇に入って突っ立っていればお望みのものが手に入るなどという甘えたことは考えていなかったはずだ。


大会でも受験でも、参加せずに成果を得ることはできないが、参加しても目当ての景品は手に入らないこともある。
参加は必要条件であって、十分条件ではない。


それでも、敗戦の苦い経験であっても、きっと自らの糧になると信じて、準備を進めている。